腱鞘炎と肩のインナーマッスル

半年ほど前からキーボード入力業務が急増し、病院で腱鞘炎と診断されたMさん。しばらく病院へ通ってはみたものの、なかなか痛みが治まらず、せめて痛みだけでも緩和できないかとワラにもすがる思いで来店されました。

腱鞘炎を経験した方ならわかると思うのですが、痛みが出始めた時はすでに首・肩・腕・肘・手首・指先といった各部位の筋肉・腱へ相当な負担が蓄積していることが多く、一旦腱鞘炎になってしまうとなかなか痛みが治まらなかったりします。病院でも痛み止めの薬や湿布などを出してもらえますが、基本的には「手を使わない」ことをすすめられます。じゃあそれで仕事を休めるかというと、そう簡単にいかないのが現代社会のツラいところで、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、ごまかしごまかし腱鞘炎と長く付き合っている方も少なくはないでしょう。

偏った一方向へねじれて戻せなくなっていた

Mさんも長期間キーボードを叩く仕事を続けていたためか、首~肩~指先までの筋肉が「押し」一辺倒に偏っていました。ボディメイク的に見ると、首・肩・二の腕・背中に無駄なお肉が乗っかりやすい方向へ関節がねじれている状態です。最初はマッサージへ行って痛みをほぐしてもらっていましたが、一向に良くなる気配がなく、いつの間にか通わなくなってしまったとのこと。

腱鞘炎でマッサージ・整体などの施術を受けて、その場では痛みがなくなるのに、なかなか治らない経験をされているほとんどの方は、おそらく根本的な部分の改善まで至れていません。Mさんも痛みが出ている箇所、筋肉の緊張している箇所を重点的にほぐされた形跡はあったのですが、重要な根っこ部分というのでしょうか。本来は動いていなければいけない肩周辺のインナーマッスルが、極端に動かなくなってしまっていることを施術中の動作テストで確認できました。

ココが動かないと腕先を酷使してしまう

肩のインナーマッスルは胴体と腕の繋ぎ目付近にあります。ここが動いていないということは、腕先を酷使しやすい状態へ自ら持っていってるようなもので、いくらマッサージを受けてもなかなか症状が改善しないのもうなずける気がしました。腱鞘炎とは違いますが、脇から二の腕にかけてお肉が付いている方も同様です。肩のインナーマッスルが動いていなければ、いくら腕のトレーニングを頑張っても引き締めは難しいです。

Mさんの施術は肩から腕先までの伸縮性を失った部分の揉みほぐしに加えて、姿勢バランスを整える揉みほぐし+正常な可動域を確保するためのエクササイズへ時間を注ぎました。自らの意識で肩のインナーマッスルを動かせるようになったところで、自宅でも取り組める宿題を追加。効果を早めるために体幹のインナーマッスルも同時にトレーニングしました。

全身運動って必要なんですね

目に見えて症状が改善し始めたのは、肩のインナーマッスルを自力で動かせるようになったあたりからです。胴体と腕の中継地点になる部分なので、ここを意識して動かせるのとそうでないのとでは、機能的・見た目的にも大きな違いが現れます。全身を使って指先へ想いを込めるピアニスト・書道家のように、本来は手先・指先も体幹を活かして動かすのが正解なのですが、長時間キーボードを叩き続けていると、どうしても指先だけ使う方が効率的なんでしょうね。その結果、手首を壊してしまう。

Mさんは「もう二度と手首を壊したくないから今のエクササイズは続けなきゃ。パーツのみ鍛えるのではなく、やっぱり全身運動って必要なんですね」とのこと。多忙な中できる限り時間をつくって通っていただく形で、改善するまで週1ペースで1ヶ月程度かかりましたが、肩のインナーマッスルを意識して動かすようになってからは痛みが出ることもなくなったそうです。

コリや痛みを感じている部分を処置・触りたくなる気持ちもとてもよくわかりますが、木を見て森を見ず。実は全身のトータルバランスを整えることが近道だったりすることも多々あります。

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